【怪しいおやぢ】です。

 『類聚世話百川合海』

(るいじゅ せは ひゃくせん かっかい)から……



 「ち」の字の部。



『地踏鞴踏で 千鳥足』
(ち たたら ふんで  ちどりあし)


 炉に高温をおこすために風を送る鞴(ふいご)。

 手で押したり、足で踏んだりします。足で踏むものが、文字通り踏鞴。

 その様子は、現代風に地団駄と言い換えた方がいいでしょうか。



 酔って足下がおぼつかない様子を、千鳥の歩みになぞらえて千鳥足といいますが、地踏鞴も、踏鞴のない状態で踏むことから、酔った歩き振りをいいます。

 ま、酔っぱらいの有り様は、昔も今も変わらないということでしょう。


「なんや、おっちゃん。足ふらふらやんか。だいぶ酔うとるんやないんか」

「酔うとらんわい」

「なら、言うてみ。ちたたらふんでちどりあし」

「なんや、ちィたらたたたら……。ちィ出た」

「あ、あかん。おっちゃん舌かみよった」

は、さすがにないか。 



 ちょっとに済まぬちの字をば、知恵なき我らが言なれば、縮め申し納め候。

 との作者のことば同様、

 こちらの、「ち」は、もう出ないのでございます。