文化二年、本所の某の下屋敷で、地面を掘って奇物を手に入れたと言う話があった。
 その太さが三寸回り、長さが四、五寸。
 彫り付けがあって、王エイと記してあった。
 どんなものかは、誰も知らなかった。
 一説には黄金であったというけれども、事実かどうかは確かではない。
 聞いたままに書いておく。

 エイは、「さんずい」に英。

  【耳嚢(みみぶくろ)】根岸鎮衛著・三章企画編訳