世間では、女の髪を根元から切ることがある。
 髪切りと言って世間の怪談のひとつとしている。
 中には男と婚約して、父母親族が縁づけようとするのを嫌って、髪切り怪談に託して髪などを切る者も多いそうだ。
 中には、実は狐の仕業というものもあるらしい。

 松平京兆の在所、上野高崎城下で、髪を切られた女が二三人ほどいた。
 同じ頃野狐を捕まえ腹を割いてみると、その腸の中に女の髪がふたり分ほど入っていたと言う。
 一様に論じることはできないということか。

 ※松平京兆 松平輝和(まつだいら・てるやす) 上野国高崎藩主大阪城代       
   ※【耳嚢(みみぶくろ)】根岸鎮衛著・三章企画編訳