証拠開示ー「検察官は自己に不利な証拠を弁護士に見せるべきか?」 | fungusticのブログ

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40男が嘯く!!

ツィッター(加筆修正あり)
より


本日勉強終了。
最後に刑訴規則316条の13から27(公判前整理手続における争点及び証拠の整理)を素読して寝ることにする。


「検察官は自己に不利な証拠を弁護士に見せるべきか?」


これが疑問として湧き出て頭から離れない。結局、素読に収まらず、教科書、判例と渉猟することになった。見せるべきと、見せるべきでなく弁護士は自分で探すべきという二つの考え方がぶつかりあっていて、今は進化の途中にあるといえる。


読んだ判例は刑訴法百選61。これはイケマエと呼ばれる自分が使用している教科書の池田修先生が書かれている。ものすごくわかりやすい。特にこの昭和44年4月25日には同日に出された23-4-248と23-4-275の二つの判例がある。百選では、前者がメイン、後者が解説で説明される。これが前田の教科書だと若干わかりづらく、自分も解説を読むまで一つの判例のことだと勘違いしていた。


刑事訴訟法のルールは、当事者が証拠調べの請求を予定している証拠についてはあらかじめ相手に知らせる旨定めるが、請求の予定のない証拠はその対象ではない(299条)。


この請求の予定のない証拠こそが問題なのだ。検察側は自己に不利な証拠はわざわざ証拠調べの請求をして首をしめるようなことはしない。となると、弁護側はその証拠に触れることができないということになる。昭和43年の日弁連の人権擁護大会の決議を読むと、当時の弁護士達の怒りが伝わってくる。


一部を抜粋する。

「普通の刑事事件では、検察官は、たいていその手持証拠を弁護人に見せているが、少しく事件が複雑になると、検察官の態度は一変し、手持証拠の開示を拒否することがおこる。その理由は、刑訴299条で、証拠調べを請求する意思がないから開示する必要はないという形式論である」


「しかし、公益の代表者たる検察官が、民事事件の原告代理人の如く、勝ち負けにこだわるような態度でよいのであろうか。」



このような怒りが最高裁に届いたのか、最高裁は決定で、状況に応じて裁判所が訴訟指揮権に基づいて検察官に対し、その所持する証拠を弁護士に閲覧させるよう命ずることができると述べた。平成16年に改正成立した公判前準備手続に定められた規定群はそれらの結晶である。


だがこれらの規定群に該当しない事件は、未だ判例による個別的な判断にかかっている。検察というのは何なのか、勝ち負けか、真実追究か、闇の深そうな問題である。

おやすみなさいませ☆


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