『夏の人喰いバクテリア』 ビブリオ バルニフィカスに注意!! | 福岡ER ~日々奮闘中!~

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昨日は七夕。そして、もうすぐ夏休み。
7月に入り、ERでは熱中症がらみの患者さんが増えてきました。

今年の夏の暑さは、要注意です。
猛暑の夏、熱中症には特に注意が必要ですが、それ以外にも注意すべき怖いものがあります。

それは、
『Vibrio vulnificus(ビブリオ バルニフィカス)』という細菌(グラム陰性桿菌)です。

温かい塩水を好む身近にいる細菌。
浅くて流れの悪い内海は、猛暑の夏に水温が上がりやすく、この細菌が増殖しやすいのです。
なので、日本では有明海や瀬戸内海周辺。海外では台湾やメキシコ湾で多く報告されています。

2001年の夏。この年もとても熱い夏でした。熊本の八代で4名の感染者が出て、激烈な経過で2名が死亡したということで、世間にも知られるようになりました。いずれも、有明海で獲れたシャコを生で味噌につけた『しゃくみそ』を食べた何らかの肝疾患(肝硬変など)を持つ方々でした。

肝硬変や糖尿病などで免疫力が低下している人が、このVibrio vulnificusが増殖した魚介類を摂取したり、海水中でケガをすると発症し激烈な経過で命を脅かします

以前、経験したのは胃と脾臓を摘出した既往がある患者さんでした。スーパーで買ってきた刺身を夜食べ、その翌日から歩けなくなり救急搬送されました。すでに敗血症性ショックの状態で両足には紫色のいわゆる紫斑と水疱形成があり強い痛みを訴えておられました。
つまり、両下腿の壊死性筋膜炎(重症軟部組織感染症)。しかも急速に進行します。

 

病歴と症状からすぐにVibrio vulnificus感染症を疑い、抗菌薬投与。さらに両下腿の切断術を決断。その後の集中治療で何とか救命に至りました。


経口摂取による感染の場合致死率7割くらい。創傷感染の場合は致死率3割くらい。と言われています。なので人喰いバクテリアなどと呼ばれているのです。

肝疾患や糖尿病などの基礎疾患を有する方は、猛暑に自分で釣った魚などを自分で刺身にして食べるのは特に要注意です。加熱した料理が無難です。ケガをしやすい岩場なども要注意ですね。


熱中症で命を落とすこともあります。夏休みになると水難事故が増えます。食中毒も増えます。
そして、猛暑の夏には『ビブリオ・バルニフィカス感染症』にも注意が必要なのです。
【K】