大田区立特別養護老人ホームにおける医療行為に関する指針 | 2太郎2姫に育てられる父日記

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大田区で示された面白い資料がありました。

考えさせられます。

大田区立特別養護老人ホームにおける医療行為に関する指針

平成15年12月5日
保福事発第335号

特別養護老人ホーム(特養)は施設による要介護高齢者に対する福祉サービスの一つとして大きな意義を持つものである。
特養は、福祉施設であるが、入所者は高齢であることから福祉サービスだけでなく、何らかの医療行為が必要な場合が少なくない。
このため、特養には医師が配置され診療が行なわれているが、医療行為の内容について必ずしも明確でないことから、区立特養内での配置医師・看護師の職務内容・医療行為が均一で格差のないものを目指すため、指針などの基準の必要性が課題となっている。
この指針は、このような医療の必要性と施設の実情とを勘案し、大田区立特別養護老人ホーム医療協力運営会議における検討を経て作成したものである。
なお、配置医師の特養利用者に対する診療等についての診療報酬請求の詳細については、東京都福祉局の平成14年7月29日付通知、「特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて」により行うものとする。
1 この指針の基本的な考え方
(1) この指針は、大田区立特養内の医療行為の基本的な方針を示したものである。
したがって、医療行為の内容は、施設長との連携を図りつつ、配置医師の判断のもとに入所者個人の心身の状況や置かれている環境等に照らし、また本人及び家族の希望等を勘案し、随時、変更可能なものである。
(2) 特養入所者の慢性疾患の診療は、配置医師が行う。
(3) 短期入所生活介護(ショートステイ)の入所者に対する慢性疾患の診療は、指示書を記載した「かかりつけ医」とし、配置医師は入所中の健康管理と緊急時の対処のみを行う。
(4) 本指針は公表し、施設は入所者・入所希望者及び家族に対してその内容を説明し、理解を得る。
2 医療行為の区分と指針
◆グレード1
・特養内で日常的に医師の指示により看護師が実施可能な医療行為
・入所者が入所後に必要となった場合も、入所継続可能。
①褥創処置
②浣腸、摘便
◆グレード2
・特養での実施が可能な医療行為。ただし、無条件ではなく、通常より医療依存度の高いケースでは、グレード3へ移行する。
・入所後に必要となった場合も、病院での処置後に入所継続可能。
①導尿、膀胱留置カテーテル、腎ろう、膀胱ろう(カテーテルの交換者とその場所はケースに応じて行う)
②人工肛門(ストーマ)
③喀痰吸引
④インスリン注射(血糖コントロールが良好なもの)
⑤経鼻的持続陽圧呼吸法(NCPAP)
◆グレード3
・高度な医療を必要とするため、特養内での実施は、その時点での看護師数や特養内での医療行為の総量等により影響を受けるため条件付で可。
・入所者がこの医療行為が必要となった場合は、個々のケースで対応する。
①経管栄養療法(胃ろう・鼻腔カテーテル)
②在宅酸素療法
③脱水などに対する一時的な点滴
④入所中の事故による創傷に対する縫合処理(簡単なもの)
⑤毎日の血糖測定とスライディング・スケールによるインスリン注射
⑥血液透析
◆グレード4
・さらに高度な医療行為が必要なため、特養での実施は原則的に不可。
・入所者が入所後、必要となった場合は適切な病院等へ転院させ、この医療行為を必要とする限りは特養へ再入所することは不適切。
①自己腹膜潅流
②中心静脈栄養、24時間持続点滴、定期的な静注・点滴
③悪性腫瘍患者への化学療法、非経口的癌性疼痛治療
④気管切開下人工呼吸、鼻・顔マスク間欠陽圧人工呼吸
⑤結核菌排菌者への治療
3 その他の医療行為
(1) 感染症対策
別に定める感染症対策マニュアルに準ずるが、主な感染症対策は下記の通りである。
①一般的な予防対策は、米国CDC(国立疾病予防センター)のスタンダード・プリコーション(注)の概念に従う。
②インフルエンザについては、ワクチンによる予防を基本とし、厚生労働省健康局の平成14年度版「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」に従う。
③疥癬については、皮膚科医の指示により、可能な限り特養内で治療する。
④結核菌排菌者、食中毒については、適切な病院へ入院させて治療する。
⑤MRSA保菌者については、入所制限なし、かつ特養内で治療は行わない。
(2) 高齢者の問題行動
精神科配置医師の指示に従う。
なお、「医療は、国民自らの健康の保持のための努力を基礎として」(医療法第一条の二)提供されるものであることから、入所者やその家族が医療に対して非協力的であることにより生じた患者の不利益に対する責任は、患者自身が負うものとする。
①身体拘束の原則禁止
②自己決定権の尊重・権利擁護
(3) 死の看取り
現時点では関係者間でのコンセンサスが得られていない事項なので、特養では原則として行わない。
(注)スタンダード・プリコーション(SP)の概念は、(1)血液、(2)”目に見える”血液を含むかどうかにかかわらず、全ての体液、分泌物、排泄物(汗を除く)、(3)傷のある皮膚、(4)粘膜など湿性生体物質を全て感染陽性として扱うことである。従来の概念と大きく違うのは、医療行為前に感染症を確認するための検査は行わないことと、全ての患者に適応することである。SPは1996年に米国CDCより標準予防策として提唱され、その内容は(1)手洗い、(2)手袋の着用、(3)その他の防護具の着用、(4)針刺し事故対策の4つに大きく分けられている。この中でも特養においては、ケアや医療行為前後での手洗いが最も重要である。