赤い爪を喰うオンナ | ふ〜ふの交換にっき

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柴田楓と内田彩菜が交換にっきをやってます。




夕方17時を過ぎた頃...


どこからともなく聴こえてくる不気味な音。


ボーリボーリ。ガリガリガリ...



ゾワッと背筋に悪寒が走る。
見てはいけないものなのだと直感が訴えかけているのかもしれない。

しかし好奇心は止まらない。

何だろう何だろう
見たい見たい見たい
で頭の中がいっぱいになる。


高鳴る鼓動を押さえながら、ジッと音の先に目をやると...

黒い何かが動いている。



オンナだ!

わたしは確信した。


黒くて長い髪のオンナが背中を丸めながらモゾモゾと動いている。


丸まった背中からは触れてはいけない何かを感じる。

(あな恐ろしや...ヤマンバだろうか)


そっと耳を澄まして聴いてみる。
すると


「ん...まい...んまい...」



「ううう...んまい...」



ボソボソと聴こえる声。
どうやら'ウマイ”と言っているらしい。

どうやら何かを喰っているようだ。
オンナは何を喰っているんだろう?

わたしはジッと目を凝らした。

すると
オンナの手には赤い爪が握られている。

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爪?!

赤い爪をどうして?!

も し か し て
ヒトがヒトを食べているの!?!?


ヒトの爪だと分かった途端に恐怖で腰が抜けてしまった。
ぺたりと床に座り込んでしまったわたしはもう動けない。


「ガタン」

オンナが食事を終えたようだ。
そしてクルリとこちらを見た。


(ヤバい!気付かれた!!!)
さらなる恐怖に見舞われたわたしはもはや声すら発することはできない。ただガクガクと震えるのみ...。


ギロリと睨む二つの目。右側の口角だけ変に釣りあがっている。
そしてオンナは言った。

「次は...お前の番だ!!!」




「!!!!!!」
わたしは声にすらならない悲鳴を上げた。
逃げなくちゃ!逃げなくちゃ!


抵抗は虚しく、わたしの前にオンナが立ちはばかる。


「ほら、お前の番だ...」


オンナがグイとわたしの顎を持ち上げた。

わたしはあまりの恐ろしさにギュッと目を瞑ってしまった。


そして口をこじ開けられ、何かを放り込まれた。


「...!ん、んまい...!」


口のなかに広がる塩気。フワッとした食感。まるで海老のようだ...なんなの?これ...!


パチッと目を開ける。

するとオンナが微笑んでいる。

「ね?おいしいでしょ?」


どうやらオンナはヒトでは無く、海老を食べていたようだった。
そしてその海老をわたしの口に放り込んでくれたらしかった。


「お、おいしいです...」


それを聞いたオンナはニコリと笑った。




「ね?おいしいでしょう...ザリガニ。」



ザ、ザリガニ!?!?

わたしはそれを聞いた瞬間に泡を吹きながら倒れてしまった...。
だってザリガニを食べちゃったんだもの...。


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ここからは後日談なのですが、

同僚がオフィスを訪れた時、やっぱり見ちゃったんですって。
あのオンナを。

夕暮れのオフィスに
モシャモシャと
赤い爪を喰うオンナが二人いるのを。