あぁ…本当に、すっごく、すっごくよかった。街頭ひとつない、自然の闇が体をしっとりと包んでくれた。それがとっても気持ちよかった。
わたしは夜が好きなんだなぁとしみじみ思う。ピカーンと晴れた空を見上げていると、新しいこと始めなきゃ!と前向きな気持ちになるけど、闇夜に浮かび上がる真黒な山の影を見ていると、お母さんのお腹の中に座っていた頃のような、やさしくて、いとおしい気持ちを思い出す。そして、暗闇の自然のなかに身を委ねていると、愛する人の腕のなかに包まれたような、このまま時が止まって欲しくて、泣きたくなるような気持ちになる。
空を見上げると、プラネタリウムよりも美しいキラキラ光る星。流れ星も見えた。そして、両側にマングローブ林の生える川に目をこらせば、水中でキラキラと光る夜光虫が輝いている。ボートの走る水しぶきの中で、キラキラとまたたく光。それはまるで空の星が降ってきたような神秘的で、強い美しさ。
自然の美しさは、果てしない。ひっそりとたたずんでいるのに、圧倒的な美しさを携えている。そして自然の黒は、心をぎゅっと包む、やさしい色だった。