以前から、とある場所でこの映画の存在を知り、ちょっと気になっていた。


『モーツアルトとクジラ』


自閉症スペクトラムの一つである『アスペルガー症候群』の大人たちのちょっとの日常と、恋愛模様について描かれている映画です。



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ちょっとあらすじを書いておくと・・・





主人公のドナルドは数字の天才。素数をこよなく愛し、大学での成績も優秀で、でも、アスペルガーの特性のおかげで、その才能を活かした就職先は見つからず、タクシードライバーの職について、自活しているが、そこでも何度もヘマをして、クビになったり・・・と、

前途多難な様子。


相手役の、イザベラは、そんなドナルドが発起人になって活動しているアスペルガーの自助組織(集会?)に参加しに来た同世代の女性。彼女は、音楽やアートに才能を持ちながら、やはり、特性の為に、奇人、変人扱いされたり、男性にだまされたりと、数々の経験をしてきている。


そんな2人が、出会い、お互いに意識し合い、完全なるイザベラのリードで、恋人関係となる。


お互いにこだわりや感情の起伏の激しさ、言葉で感情を表す事の不得意さなど、様々な困難を抱えた同志の2人が、果たしてカップルとしてうまくやっていけるのか?


・・・というような内容です。





主人公の彼女役のイザベラは、非常にうちの長女に似たタイプのアスペのようで、「あるある~!!」と、1人大きく頷きながら映画を見ていた私でした。


片方がアスペでも、その感情の起伏の激しさに、振り回されて、カーッとなる事も多いのに、これが両方ともアスペ・・・それも、それぞれにこだわりや嗜好の違うもの同志が、一緒に暮らしたり、結婚したりって可能なのだろうか?と、思いますよね~。


実際、映画を見ていても、主人公達の極端な感情の振り子のゆれぶりには本当に疲れます・・・(;´▽`A``


でも、自分の気持ちをうまく表現しきれず、また、後から考えたら反省するような事ばかりしてしまう、感情のコントロールの下手な彼ら自身が、一番苦しみ、それでも、互いへの信頼を強めていく様子は、清々しい!!


そこには、普通のオシャレな恋愛にありがちな、駆け引きとか計算とか言うようなものとは別の、もっと、もっと、純粋で、優しい、繊細さが存在するから。



長女のどういうところが、イザベラに似ていると感じたかというと・・・。


何でも、思ったことをストレートに言ってしまうところとか、妙にサバサバしていて、性に関することなども、もの凄く担当直入に切り出してしまうような所。


それでいて、相手に自分をそのまま受け入れてもらえていないと感じると、非常にそういうことに敏感で、傷つき、パニックになってしまうところ。


あそこまで極端ではないにしろ、本質として持っているものが同じであると確実に感じさせてくれるものでした。


やっぱり、一筋縄では行かないし、自己主張も相当強いし、人との関わり方にも、自信がなくてギクシャクしちゃう所があるので、本当に生き難いんだろうな~という事が、よ~く伝わってくる。


主人公のドナルドにしたって同様。


とても、優しくて、頭も良くて、リーダーシップもとって行ける魅力のある人なのに、数字に拘るあまり、注意力散漫になってタクシードライバーとしての仕事にも支障を来すし、緊張して何時間も前からデートの準備を考えて

過ごしながら、支度が間に合わなくなり、うじうじしてしまったり・・・。



でも、そんな彼らだって、人間として、人並みの幸せを求め、凄く一生懸命に日々を生きている。



ただね~、ちょっと引っかかったのは、イザベラは美容師として職を持ち、ドナルドも、イザベラの精神科の主治医の口利きで、なんと大学で職を

得る・・・という幸運に恵まれる・・というのがね~。


ちょっと、うまく行きすぎな気がして、現実味が薄れてしまいます。


確かに、ドナルドは、自分の数字の才能にぴったりなポジションを手に入れ、収入もそれなりに得られるようになり、素適な家にも住めるようになり・・・・と、理想的な感じなんですけどね~。


実際には、なかなか、そううまくは行かないのが現実なのだ!と思ってしまうへそ曲がりな私です。


そうね~、主人公のドナルドは、ちょっと夫に似ているタイプに見えたような。


きっと彼も、若い頃に自分の活かすべき才能に周りで気付いてくれる人がいて、無駄な努力をして挫折を繰り返さなくても、自分に合った職に就けていたら、今ごろもっとずっと幸せな人生だったんだろうな~って思うもの。


そもそも、大学で進むべき学部&学科を決める際に、最大のミスを犯している・・・と思われる選択をしているから、その後もずっとうまく行かないわけで・・・。


この映画が作られたのは、2004年だそうで、もう5年前になるのね。


その時点で、20年前には、アスペルガーの存在さえ世に知られていなかった・・・そんな時代だったわけで、夫の場合もモロそれだな~なんて思ったりもするけど・・・。

(注意:夫は、アスペルガー症候群と診断された事はありません。あくまで夫の言動を長年見てきた私がそうではないか?そうであれば納得できるなという点が多々あるのでそう思っている・・・というだけです。念のため。)



おそらく、身近にアスペの人が全くいない経験のない人が見ても、ただただ変な人たち・・・と感じてしまうだけで、なかなか理解しにくいのではないかな~と思います。


逆に、身近に関係者がいる方々にとっては、色々な事を考えさせられる素適な作品になっていると思いますよ。



アスペの人も、ノーマルタイプの人も、それぞれお互いを尊重しあって、生きられるのが理想ですよね。


また、アスペ同士が、お互いに惹かれあう・・・という事の意味も、この映画を見ると、なるほど~と理解出来ちゃうところも結構あると思います。



なお、この作品は、実話を元に作られたもので、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズでおなじみの『レイン・マン』のロナルド・バスが脚本を手がけたものだそうです。監督さんは、ノルウェー出身の方だそうです。