「ヴィシェフラッド」の冒頭のハープが流れてきた瞬間、
血は沸騰し、不覚にも涙が浮かんだ。
ポン、ポロン、ポン、ポロン、ポロロロロロロン・・・
10月、チェコフィルが、わが祖国を奏るというのを見かけ、
一も二もなくチケット購入。
仕事場をそろそろ出ようとしたとき、来客があって、
お茶など淹れたあと、足早に駅に向かう。
外は冬の風が吹きすさび、寒い。
品川で総武線に乗り換えると、錦糸町へ。
一路、ホールへ向かう。
エントランスでチケットをもぎって貰うと、3階席へ。
3列向こうに母の姿を認める。
スメタナ:交響詩「わが祖国」全曲
ズデネク・マカル指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。
11月22日、すみだトリフォニーホール(大ホール)にて。
開演を知らせるチャイムの後、客席は暗転し、
拍手の中、演奏家たちの入場。
そして、ズデネク・マカル氏が登壇する。
やがて2台のハープが響き出す。
優しく心を慰撫するような旋律。
主題は第二番目の「ヴルタヴァ(モルダウ)」に受け継がれ・・・。
1970年代、ヴァツラフ・ノイマンの指揮したチェコフィルの
「わが祖国」のCDを繰り返し聴いていて、細部まで熟知したつもりに
なっていた。
実際は、あれ、こんなフレーズがあったかな、と思う箇所がいくつも。
CDでは耳は主旋律を追っていて、それ以外の部分に意識が行っていない
ことを思う。
こうしてステージを見晴かすと、視覚的にもどのパートが演奏しているのかが
見て取れ、おもしろかった。(あ、もうじきシンバルが入る。)
音響もよく、1800余席というのは、ちょうどよいスケールだな、と思ったりもした。
幕間を挟んでの2時間弱、ずっと懐かしい気持ちで
客席に沈殿していた。
それは、たとえば社会主義時代、亡命を余儀なくされた指揮者が、
民主化後、晴れて故郷の土を踏んで、凱旋コンサートを
行った席に居合わせたら、こんな感じの、
これをもっと強烈にしたような気持ちになるのではないか、
という風だった。
チェコフィルの「わが祖国」を今度はぜひ
プラハ・市民会館のスメタナホールで聴きたい。
一度は。