原発関係のエントリーは終了しようと思っていたが、管首相の浜岡原発停止要請というものが出てきたのでこれについて記載しようと思う。

この管首相の浜岡原発停止要請をうけて日本の今後の立場はどのようになるだろうか?

まず表面的なことであるが、例えこの夏大規模停電に陥ることを免れたとしても、日本の成長にはキャップをかけられた状況になったといえるだろう。

新興国に生産設備などを建築する際には、そのインフラとして電力が安定的に供給されるか否かを調査する。安定的に供給できない場合はそもそもそうしたインフラの建設から始める。そしてそうした新興国の経済成長は電力の供給量拡大に比例する形で伸びていく。電力のキャップに引っかかれば新たな電力設備ができるまで停滞してしまう。

今回の浜岡原発の停止で、日本はこうした新興国並みのインフラしかもてなくなった国になってしまった。

たとえ新たなビジネスシードが出てこようが、日本の製品生産力に対するニーズがあがろうが、これに対応することはできなくなる、つまり今後世界がいくら経済成長を続けようが、日本という国においては電力というインフラのキャップにより成長ができなくなるのだ。

ただ企業はたとえそれが日本の企業であろうが、日本に存在する必要はないので、海外に生産を移しあるいは新規のビジネスであれば最初から海外で生産し、それをグローバルに販売するという戦略をとり生き延びるであろう。但しこの場合であっても国内での生産基盤は縮小することになり、その結果失業の増大及び内需の縮小につながろう。


これよりも重要なことは、首相が公式にこの国には確率8割以上で東海大地震がくると言明してしまったことだ。

企業を経営する立場であれば、30年以内に8割以上の確率で今回と同程度の大地震が集積度の高い東海地方で発生すると首相が言明する国及び東海地方から撤退しようと考えるのが当たり前であろう。

またこうした地震が起こるといっているのであるから、仮に原発がとまったといっても、太平洋沿岸沿いに建築されている高速道路・新幹線といった交通インフラも今後強制的にストップさせるのではないか。あるいは東海地方から集団で人を移住させるのではないか。という考えにいたってもロジカルであろう。

首相の公式発言とは非常に重いのである(そういえば前回の非自民党政権においても、国民福祉税を「こしだめ」といった首相がいた)。何でも反対すればいい野党時代の党主の発言ではないのである。


最後ににもっと根源的なことになるが、この国は法治国家ではないことが全世界的に明らかになってしまったことだ。

今回浜岡原発を停止したいというのであれば、法律に則って行うべきであり、仮に現行法制で不可能であれば国会で新規に法律をつくり、その法律に則って浜岡原発の停止をおこなうべきであった。
時間がかかるかもしれないが、法治国家とはそういうものなのである。
今回の首相の発言により、日本も中国と同じく法治国家ではなく人治国家ではないのかという印象を深く与えてしまった。

ある国家でビジネスを行うには、予見可能性(透明性といってもよいが)が最重要である。予見可能性の根底をなすのが、法治であり契約である。
今回の首相の行動によりこの国は、突然一度結んだ契約を一方的に破棄することも是とする国であり、恣意的な裁量国家とみなされたであろう。

現在の中国であっても国内市場が急拡大しているならそうした面も目をつぶっているだろうが、内需の急成長が見込めない日本において、法治国家ですらないのであれば、あえてこの国でビジネスする必要性は感じないだろう。

このように今回の管首相の浜岡原発停止要請により、特に海外から見て、日本という国はビジネスを行っていくに値しない国であると位置づけられた。