45歳になったので、
たまには真面目に書きます。
先日、編集の為赤坂に行った折
照明プロダクション T の巨匠照明家Mさんと会った。
ずいぶん久しぶりだった。
Mさんは
「もうすぐ一応、定年退職なのよ。」
そう言った。
「え?マジすか?会社には残るの?」
「うん…なんか籍は残してさ…形は定年退職って事で…」
「あ~良かった。」
「ほら、小田さんとか福山とかのコンサート頼まれたら断れないじゃん」
「そーだよね、御指名なんだから」
「うん。」
Mさんは小生の大きな特番やら何やらの照明を作ってくれてきた巨匠。
「日本照明協会」とやらでも偉い人だ。
小田〇正さんとか福山〇治さんとかのコンサートでは
絶対の信頼感からずっと「Mさん指名で」となっている。
照明プランも実に「アート」だ。
ふとした事から小生を気に入って頂き
もう15年の付き合いか…
おそらく、45歳の小生がMさんにとって
ウマが合う最後の若手(笑)演出ディレクターなのだろう…
小生は「照明」に関して、かなりウルサイ。
そして「照明」に関して、更にウルサクなるべく小生を育てたのはMさんだ。
もともと…映画も照明を効果的に使う監督の作品が好きである。
皆さんの評価はどうか分からないが
リドリー・スコット監督作品の照明は昔から参考にさせてもらっている…
なんだったら作品の中身よりも
「今回はどんな風に『光線』を使うんだろう…?」
それを楽しみに観ている。
スコット監督の照明と光線の使い方は独特だ。
グラディエイター…等、大作が多いのだが…
かなり前に撮った珍しい「恋愛モノ」のラブシーンも
素晴らしい照明の効果を使った彼らしい作品にしていた。
小生は普段、街を歩いていても
ふと立ち止まり、店やビル、公園で…照明を見ている事が多い。
照明フェチ(そんなのあるのか?)である小生を
老獪で芸術肌のMさんは面白がってくれたのであろう。
小生のセオリーを無視した照明発注に驚き、試し、楽しんでくれた。
「前例がない!」
Mさんはそう言いながら…
「いいねぇ…やってみるか」
こうやって乗って来て…
実際に小生が画を撮って見せると
「INUIちゃん、スゴイ画だねぇ~。間違いなく面白い!」
こう言って小生を乗せ、育てた。
小生が今こうして一応演出家としていられるのは
数多くの方々の教えがあればこそだが
Mさんは間違いなく恩人のひとりである。
Mさんは
「でもさ、下の人間も育てないといけないから
いつまでも僕みたいな年寄りが現場やってちゃダメよね」
そう言って笑う。
小生は
「でもさ、Mさんにって言われたら断れない大物ばかりだもんね」
Mさんはこう返した
「もうひとり、絶対に断れない人がいる……アンタだよ」
ありがてぇなぁ。
こうやって才能に乏しい小生をずっと育てて来てくれたんだ。
また「絶対に照明はMさんじゃなきゃダメだ」という番組を作ろう。
たった数分の立ち話だった。
こういう人達との関わりが
小生を奮い立たせ
もっともっと…と実力以上の事を望む原動力になっている。
45歳、テレビ屋になって25年…
もう金も希望も無くなったテレビ業界だけど
きっと残り僅かだけど…
まだやれる事がある。
どこの局、番組に行っても
「金が無いんですよ…」ばかり
金が無くてもテレビの夢を作って来た人達はまだ現役だ。
Mさんのように…
きっとまだやれる事が残っている。
そう信じている。