一人っ子であることと、一度家を出てまた同居したことと、両親が別居していることと、ボクのために生きてくれた―ボクのオカンというコピーが僕を必要以上に入り込ませた。僕にとって今、考えられうる最も辛いできごとといえば“オカン”の死だろう。いつか来るその日はなるべく遠い未来であるよう願ってやまない。“オカン”にとって僕は全てであり、これまで文字通り心血を注がれてきた。僕にとっても誰より影響を受け、誰より尊敬し、誰より大事な人である。母の強さ、底のない愛、自己犠牲を学び、それを還元すべく模索中。
リリー・フランキーの私小説的ベストセラーの映像化は、2時間超の長尺でも足りないくらいのボリュームだと、読んではいないが推し測る。東京タワーが見える病室にボクこと雅也とオカンがいて、刻一刻と死が近づくオカンを見守るリアルタイムを、幼少時からのフラッシュバックが追いかけ、最後に追いついた。細かいエピソードがいちいち涙腺をつき、鼻水も垂れて、なぜかヨダレまで出ていた。
身近な人間の死や悲しい別れなど、要は今まであったものが失われるということを題材に盛り込めば大体において泣ける。それと良い映画というのは別問題だ。僕の涙など安いものなのだ。