鬱々とした高校時代だった。学校帰りに寄り道することはあまりなく、休日に友人と出かけることもほとんどなく、何かに対して熱くなるなんて皆無で、趣味や友人どころか当時どんなことをしていたかという記憶すらない。しかしその鬱屈した思春期は今の価値観を形成してそれを否定せず、青春を謳歌した人間が羨ましくないといえば嘘になるが、また青春をやり直せるとしても、否やり直したい。女子と話をしたかった。淡い恋を経験したかった。キスやセックスをしなくても手を繋ぎ、髪に触れるだけで満たされた感情を呼び起こす。
同じ学校に通う5人の残りわずかとなった高校生活を切り取る。田舎の風景、純朴な彼ら、不慣れでぎこちない女子と男子の会話にシンパシーを感じるのはマジョリティの意見だろう。卒業を控えて新たな旅立ちに胸を躍らせつつそれは別れの季節でもあり、多感な年頃とあればなおさら彼らは笑い、弾け、悲しみ、傷つく。共通感覚のように岩田ユキ監督はその機微を表現した。
榮倉奈々は、僕が妹にしたくてたまらない宮崎あおいに似ているといった程度の印象だったが、本作にて思い入れが強くなった。こう、みずみずしいタイプの女子が好きなのだ、というとロリコン然となることも否めず、谷村美月もなかなかどうしてその頭を撫でたく、白いハイソックスがたまらなく、結局は自分、ロリコンなのだと知る。
ポラリスが聞きたくなった。梶井基次郎が読みたくなった。