パリに、南北それぞれのコリアから来た男二人の物語。南から来たチョンヘは芸術家くずれで同胞の作品を盗んでは路上で売って生計を立てている。北から来たホンサンは脱走兵で、特殊部隊に入ろうとしている。ホンサンがパリに着いた当日、チョンヘに騙されそうになったが、当面の生活費を稼ぐため彼と渋々組むことにした。フランス語ができて口八丁のチョンヘが指示を出し、鍛え抜かれた肉体を持つホンサンが実行する。マフィアの末端構成員として暴力を振るう毎日が続いた。コリアンに手を上げた時、ホンサンはチョンヘを「同胞を殴ることに抵抗はないのか」と罵ったのが印象的だった。国同士がいがみ合っていても人は民族としてシンパシーを感じている。「コーストガード」でも南北分断の悲哀、滑稽さを描いたキム・ギドクはそこに強い思いがあるように受けとった。
作品に自らを反映させることが特に初期作品に多いのかも知らん。ギドクがフランスに留学していた頃に何を思っていたのか。実体験に近いことも含まれているような気がする。腹に刺さる冷凍の魚、船の上での生活、マジックミラー越しに見るピープショーにはらしさがあった。一貫しているともいえる。荒削りで、安っぽく、ダサい音楽に包まれ、極めて小さい漏斗の先から僕は出た。