自由を求めて辞職した南村は家でゴロゴロしていた。内職をする妻の駒子に出社を促されるが、事情を話すと家を追い出されてしまう。彼はいよいよ自由になる。住所不定無職になった南村は、同じく嫁に捨てられた浮浪者と意気投合して寝食を共にするようになった。縛られない生活に居心地の良さを感じたのも束の間、しがらみはどこで何をしていてもついてまわることを知った。
夫はすぐに帰ってくるだろうと高を括っていた駒子だったがしばらくしてもその気配すらなく、半ば諦めた駒子もまた夫にとらわれず自由に恋愛を謳歌する。一線を超えることはなかったが、言い寄ってくる男は揃って似たようなものであることを知った。これは男女の機微、業、性を描いた傑作だった。結局、元鞘と思いきやひねりを効かせてから丸く収める。
脇を固めるのが杉村春子、淡島千景、佐田啓二、東野英治郎、笠智衆と豪華でしかもそれぞれがアクの強い役どころでそれだけでも見どころがある。佐田啓二が二枚目形なしのなよなよしたしたキャンディーボーイなんて面食らったが、彼の息子には演じきれない芸当で恐れ入る。笠智衆がまさか屈強な兵隊上がりとは、彼と認めるまでかなりの時間を要した。