となり町戦争 町という小規模単位で密着させて戦争は絵空事、対岸の火事ではないとでも言いたげだった。東京からの転勤先はテレビで四国アイランドリーグを放送していることからおそらくその4県のどれか。主人公・北原の住む舞阪町がとなりの森見町と戦争を始めたことを、彼は地方広報紙の3行記事で知った。戦場は映し出されず、戦火が上がる様子もなく、そこでおこなわれていることを実感させない。北原にとっても冗談としか受け取れなかったが、役場からの要請で偵察要員にさせられ、現実味がないまま戦争に加担していくことになる。

白々しい「戦争何日目」というテロップで時系列に従い、空々しい効果音を使用して薄っぺらさが前面に出る。目の当たりにしていないその戦争で人は確実に死んでいた。地方紙には戦死者の数が、北原の同僚も銃撃に巻き込まれて命を落とした。上司の田尻は中東で戦争を経験しており、森見町に傭兵として雇われた。殺し合いを肯定して田尻はなお北原に説教して、彼を思い改めさせる。そこに作り手のスタンスがうかがえた。

ギニアに滞在中の邦人が外務省の退避勧告を無視して居座っているという。ジャンベを習うため訪れて、治安が悪化して、今年に入って死者が100人を超しているにもかかわらず状況が分かっていない。平和ボケは怖い。