聴かれた女 リョウは念願の風呂付アパートに引っ越した。しかしそこは壁が薄く、隣に住む女の声が聞こえた。シャワーや電話など、漏れてくる彼女の生活にリョウは侵食されていく。杉浦皐月という名前だということ、見知らぬ男から脅迫を受けていること、恋人がいること、最初映し出されるのはあくまでリョウの想像だが、彼女を知るうちに現実と取って代わる。皐月の顔、部屋の模様、皐月の恋人・雄太の顔、明らかになる度にリョウの皐月に対する気持ちも肥大し、生活のリズムを合わせ、隔てた一枚の壁を取り払いあたかもそこにいるような錯覚に陥る。

皐月との接触も果たし、好奇心は恋心に変わった。盗聴マイクまで仕掛けるようになったが、それによって彼女の部屋には既に盗聴マイクが仕掛けられていることが分かった。そしてそれが雄太の仕業であることが判明する。理解は、臨場感によるものだけでなく、彼の一連の行動もそう。雄太とリョウのやっていることは五十歩百歩であるにもかかわらず、リョウに強く移入して応援するのは、常軌を逸した行動の願望が自分にもあるからである。男の悲しい性に共感を得て爆笑して道を踏み外す瀬戸際にいるような僕は。理想的、もしくは二次元的でもある、都合の良い女性に感情を抱いているうちは危険性がないかも知らん。

顔もスタイルも性格も(映画だが)申し分ない皐月を演じた蒼井そらへの欲情は抑制がきかず、帰りにレンタルショップへ寄って数本借りた。人気女優だけあって主演作は選ぶのに苦労する。