ダーウィンの悪夢 アフリカのタンザニア、ケニア、ウガンダにまたがるヴィクトリア湖にナイルパーチと呼ばれる外来魚が放たれ、その白身魚は脅威の繁殖力でヴィクトリア湖の生態系を壊した。そのナイルパーチは食用として海外への安定供給を生み、近隣住民の生活形態までも変える。誰が、どのような目的でナイルパーチを放流したかという、核に達しないまでの事実をドキュメンタリーで映し出す。

加工して輸出すれば大金になり、一部の人間は巨額の富を得ていた。仕事の需要も増えるが貧富の差は拡大するばかりだった。治安は悪く、エイズは蔓延し、ストリート・チルドレンも少なくない。子供ですら食料を求めて骨肉の争いをする。うじ虫がたかる加工後の魚が強烈だった。それを陳列しながら、労働者は農家をしていた頃に比べればましな生活をしていると語る。映画から得られるのは視覚と聴覚の情報だけで、ヴィクトリア湖周辺の臭いは分からない。相当な臭気を帯びていると想像するに留まるのは、対岸の火事でやるせない。各国大使が集まってサミットが開かれる建物の外にはスラムが広がっていた。