法に仕える親の後を継ぐため源之丞は父・将監の下で働いていたが、報われることの少ない町奉行に嫌気がさした。羽目を外したところを将監に見つかり勘当されてしまう。その後、流れ着いた白魚長屋の居心地が良く、源之丞はそこに居ついた。長屋の住民は貧しくもたくましく生きているが、それぞれ借金を抱えて締め出されそうになっていた。
大川橋蔵の魅力を余すところなく引き出した。義理人情が表情からにじみ出る。べらんめえ口調はぬめりがあるが如く滑らかに、キリッと上がった目にはまげが似合い、パーツ一つ一つどれをとってみても小ざっぱりとしてMr.江戸っ子といったところだろうか。ちなみにシネマヴェーラの本特集のもう一人、中村錦之助はMr.一宿一飯で。
持たざる者がさらに搾取されるのはいつの時代も同じである。借金取りが執拗に彼らを追い込むのは、札差が若年寄の機嫌を取るためそこに別邸を建てようとする陰謀があったからだった。その札差の辰巳屋を演じた新藤英太郎を最近よく見る。憎らしい犬面は悪役がピタリとはまり、名脇役なのだろう。その濡れた鼻を明かして大円団の痛快人情喜劇は起承転結が確固として小気味よい。