ホッテントットエプロン・スケッチ
まずそのタイトル。ホッテントットという単語に聞き覚えがあり、どこかの部族だと記憶していた。調べてみたところアフリカの、現在はコイコイ人と呼ばれる民族だった。そしてさらに分かったことは、ホッテントットエプロンで彼ら、というと男性も女性も含まれるので、彼女らの、特徴的な小陰唇を指すという。

見た目とは裏腹にアバンギャルドな七里圭監督作「のんきな姉さん」では時空を歪ませ、「眠り姫」では登場人物を登場させず、そして本作は声を排除した。前作に続いて侘美秀俊が音楽を担当、また生演奏での上映だった。臨場感が溢れる。劇中の音もそのまま使用したり削除したり、必要な音だけを吟味して拾っているような、聴覚へのこだわりがうかがえる。

それなりに僕は映画の情報を取り入れているつもりだが、本作に携わった友人から誘われなければ知ることもなかった。アンテナはもっと高く設置しなければならない。

里香が2つの世界にいる。1つは住んでいるアパートがあり、働いているレストランがあり、そこに僕の友人も映っていておそらく現実の世界。川べりでフードを被ったクラリネットを吹く男と出会った。彼の顔にはあざがある。もう1つは人里離れた別荘のような建物があり、その2階には腹にあざを持つ人形があり、近くの草原には斑点模様の牛がいて、どこか夢の世界。見たいもの、見えないもの、見せたくないものが交錯して幻想がいつまでも続く。