父親たちの星条旗ピューリッツァー賞を受賞した一枚の写真は太平洋戦争だけでなく、そこに切り取られた兵士たちの運命も変えた。硫黄島にて掲げられた星条旗にまつわる群像劇をクリント・イーストウッド the 重厚が綴る。6人の兵士がその写真に写ったが、紙面を飾りアメリカを賑わせた時には既にその内の3人が戦死していた。軍資金が尽き、財務省は残った3人を帰国させ、国債を集めようとPRに起用した。レイニーはその波に乗ろうと野心に満ちる。ネイティブ・アメリカンのアイラはギャップに馴染めず酒に溺れる。衛生兵のドクはとりわけトラウマに苛まれる。三者三様、時代に翻弄された。

硫黄島での血なまぐさい戦闘は緊張感を張り巡らせ、アメリカ国内での国債PR活動は葛藤が募り、語り部のドクの息子による当時を知る元軍人へのインタビューはリアリティに富む。3つの時間が交錯し、それによる深みが戦争のむなしさ、一個人の小ささを痛感させる。

戦争をしている両側からの視点で2部作を形成するとは面白く、その姿勢に強く賛同する。どう、製作したところで公平なんて土台無理な話で、しかし双方から描くことで限りなくそれに近づける。どちらにも非があり、どちらにも汲むべきところがあるのは、全ての事象でいえること。