最終章は時間が切り刻まれて全てを解き明かす。在りし日のヤンの至福の顔、生き残ったラウは無間道を行く。警官として生きることを決めたラウに安息の日はない。サムが送り込んだスパイが警察にまだ潜んでいる。証拠を抹殺すべくその人間を追うが、彼もまた追われていた。
ラウはカウンセラーののリーに接触して情報を盗んだ。ヤンにとってカウンセリングは唯一の眠れる場だった。リーに思いを寄せ、ヤンが死んだ今、リーはヤンを思って涙にくれる。ビデオに写る柔らかなヤンの顔を知り、そこはラウに憧憬のようで、彼はヤンに自分を重ねた。妄想とも幻想ともとれる映像が挟まれる。
同じ警察にいる保安部ヨンの存在がラウを憔悴させた。ヤンを調べるうちに、ヨンがかつてのボスであるサムと接触していることを掴む。証拠を得るためヨンの監視を始める。しかし、ヨンのラウを見る目も怪しかった。
ラウの善人への渇望を描きながら、ヨンは果たして内通者なのか否か、尻尾を掴んだのはどちらか、本作もまたスリルを失わない。殉じた者の魂は引き継がれて残る。生きることのほうが地獄であるというような結末はとかく悲しい。