
先着の難破船は潮によるサビと、色鮮やかなカビで覆われていた。彼らはそこを寝床にして、限りがある食料が尽きる前の脱出を願った。しかしヨットの座礁は激しく、船も通らない。憔悴しきって徐々にエゴが表面化する。そのエスカレートと沿うように島のキノコが露になっていく。
人物描写が丹念でけれんみがない。社長御曹司・笠井の意志の弱さ、スキッパー・作田の裏切り、歌手・関口の尻の軽さなど、事態の悪化は冒頭からつじつまが合う。都会の病室にいる心理学教授・村井が語り部となって回想の形をとる。そのセリフから生き残ったのは彼だけだと分かった上でストーリーは進み、ラストにまた病室に戻って驚くべきは彼の顔。病室の鉄格子から見える街のネオンが毒々しいキノコとかぶる。