太陽 昭和天皇が米兵にチャップリンに似ていると言われていたことや、速記したその侍従が自決したこと。劇中でのヒロヒトやその周辺がどれだけ事実に基づいているかは知らない。しかしイッセー尾形はとにかく似ていて、人格ひいては人間を否定された生涯は嘘ではないだろう。ヒトラーやレーニンを描いてきて、日本人ではない、アレクサンドル・ソクーロフだからこそ撮れた作品だと思われる。本作を見ながら僕の口は半開きで、両唇を前後させていた。


第二次世界大戦も日本の敗色が濃くなった頃、ヒロヒトは侍従たちと退避壕にいた。苗字を持たない神として、しかし彼は自分の口臭を確かめ、崇めたてられることに疑問を感じる。前半は閉塞的な地下が舞台となり、これが上映された劇場シネパトスは地下鉄日比谷線が通るたびに轟音が響き、さながら戦時中であると思えなくもない、こともない。


ヒロヒトは一人苦悶する際も、何かと戯れる際も、常に誰かに覗き見られる。マッカーサーに召喚されて覚悟を決めるその前後、時にユーモラスである彼は愛すべき人間であることがにじみ出ていた。細部に渡る癖まで描き、勉強熱心なソクーロフには頭が下がる。掘り下げるうちにきっと、喜劇的でもあった彼を見出し、作品に反映させたように思う。

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