猫と庄造と二人のをんな 豊田四郎監督作に森繁久彌は多く出演しているようで、先に続いて本作もダメ男を好演した。猫に異常な愛情を注ぐ庄造は、母と先妻と後妻に振り回される。3人の女を見て、彼はますます猫が好きになるのであった。

母のおりんはしたたかに、息子である庄造の嫁に子種がないことを知ると、家を出るように仕向けた。さらに裕福な兄の娘を息子がめとるよう画策する。如才なく、おりん役・浪花千栄子のコミカルかつ無駄のない動きが冴え渡った。物語は先妻の品子が家出するところから始まる。庄造に未練はないが、猫を偏愛する彼とおりんの腹積もりに一泡吹かせたく、出戻りに執念を燃やす。品子役・山田五十鈴のひん曲がった口はいかにも性根が悪そうで、同情の余地があるのに同情させないその腕前の凄まじさ。庄造が福子に乗り換えることを躊躇しなかったのは、彼女の奔放さがまるで猫のようだったからだろうか。金に不自由せず、家出も経験し、手のつけられない不良娘が品子と張り合う理由は、庄造への愛よりも女の意地だった。福子役・香川京子にとってはすっぱでおてんばな女は新境地だったと思われるが、バタくさい顔と肉づきの良い太ももはその役どころを余すところなく、個人的に好みの顔でもあってたまらない。