誰一人として例外なくダメ人間だった。全うではない。しかし優しい。働くことの意義はいまいち分かっておらず、もし金に困っていないのであれば好き行為としかしないこと請け合いの僕にとって、本作のキャラクターは同調はなはだしかった。夏休みに終わりがないって「それ何てユートピア」と、それなりに年を食っても思っている。
リョウスケ、ヒラジ、カホルの3人は働きもしないでつるんでいる。人生のエアポケットを探しつつ、インドに理想郷を求めてその軍資金を集めるべく奔走した。しかし彼らはダメなので上手くいかない。サンダル工場に勤めるカズエやトルエンに手を出すチエミ、ヤクザでチエミの恋人のササキなど、彼らを取り巻く人々もまたダメで、グダグダな毎日が続く。
髪が顔に張りつく夏、陽炎が気だるさを助長し、散りばめられた小ネタがまた脱力させる。あおりで撮られた彼らの姿も知性と程遠い。新旧ビシバシステムに温水洋一、片桐はいりといったキャストは「竹中直人の恋のバカンス」を思い出させた。そういえばあれもダメゆえの不条理が当時つぼに入った。
公開初日、レイトショーだが2回上映で、2回目を見る予定が舞台挨拶があるということで満員、上映に間に合わない形で1回目を見た。エンドロールが流れて席を立とうとすると、この回も急きょ舞台挨拶をやるという。三木聡監督と主要キャストの面々が壇上に立った。「亀は意外と速く泳ぐ」「イン・ザ・プール」そして本作と、監督の作品は製作順と逆行して公開されていると知る。