映画監督など十把一からげでエゴイスト、総じて性格が悪いとふんでいるが、ラッセ・ハルストレムは別だと思う。人の良さが作品ににじみ出ているように感じる。
18世紀イタリアの水の都ヴェネチアで繰り広げられる愛の物語、その中心には常にジャコモ・カサノバがいた。3桁に上る女性と浮名を馳せ、それを疎んじる人間も多い。女性の地位向上に努めるフランチェスカもまた、彼同様に教会から異端とされた。カサノバはフランチェスカに恋をする。
カサノバと彼に仕えるルポ・サルヴァトは画策し、嘘を重ねて言葉巧みに、恋を全うせんと画策する。カサノバが最初に求婚した処女ヴィクトリア嬢、その彼女に恋しているフランチェスカの弟ジョバンニ、二人の母親アンドレアは娘に玉の輿を狙わせ、許婚となったラード王パプリッツィオは自らの容姿に悩んでいる。彼らを騙し、それがバレて窮地に陥るが、最後に大円団が待っていた。複雑に張り巡らされた嘘の糸も解けてラッセ・マジック。
バロック調の文化が優雅で、当時の宮廷や謝肉祭は華やかだった。ヴェネチアの街並、仮面舞踏会の特性を活かして演出する。ところでカーニバルとカニバリズムは語源が同じではないだろうかと気になった。