猫目小僧 井口昇の監督作品は「おいら女蛮」「卍」に続き、本作は今年に入って3本目の公開となる。量産体勢に入っている。しかしそれが決して勢いにならないのも彼らしさ。客は少なかった。

外見はイメージに大きく関与する。第一印象はその後にも響く。言いかえれば上っ面だけで判断されかねない刹那は不条理のようにも思える。主人公の女子高生・まゆかは顔にあざがあることがコンプレックスだった。彼女の弟・浩が妖怪の猫目小僧と仲良くなり、猫目小僧は浩のぜんそくとまゆかのあざを自らのつばで治す。異形でなくなったことにより、まゆかは性格が明るくなり、恋人ができた。まゆかに恋心を抱いていた、異形である猫目小僧の心境は複雑だ。

時を同じくして、妖怪ギョロリが村に現れた。襲われた村民は皮膚が変色、膨張し、肉玉になってしまう。まゆかの周囲の人々も次々と肉玉に変えられる。醜い異形の恐怖が村を包んだ。見るに耐えない容姿ゆえ、忌み嫌われたギョロリと猫目小僧。ギョロリはそれを怒りに換えるが、猫目小僧は人間を救おうとする。美醜に捕らわれることが醜いと教えられる。まゆかは猫目小僧との出会い、ギョロリとの対峙で成長した。

毎度、井口昇が描く女性は魅力的だ。女優を引き出す。中村映里子に将来性を感じる。まゆかの同級生で、彼女をいじめる京子の役を魅力的に演じた。手足と首がスラリと長く、走る姿が美しい。敵役としてその目つきが素晴らしい。コメディエンヌとしての技量も見せる。劇中で笑いの大部分を担った。