嫌われ松子の一生 地肌から2センチほど厚塗りした人が、スープの表面5センチほどに背脂が浮いたラーメンと、皿に1センチほどの油が敷かれたギョーザを食べているような、こってり具合だった。いろいろ施されている。手段を選ばない美学を感じた。監督の中島哲也は撮影中に主演の中谷美紀を罵倒し、一悶着があったらしい。舞台挨拶で和解したとのことで、渾身作らしい。そういえば昔の映画監督は暴言を吐くことがめずらしくなかったようで、スタンスは踏襲する。

川尻松子は教師になるまで順風満帆な人生を送っていたが、辞職に追い込まれてから家族に勘当、ソープ嬢を経て殺人を犯し、一般的には転落とされる人生を歩んだ。そんな松子の死から物語はさかのぼる。少女の頃は夢見がちだったが現実は甘くない。愛されたいが裏切られる。皆が経験することだろう。前半に笑いを散りばめて、後半へ進むにつれて松子の人となりが露になり、ヒューマンドラマの装いが強くなる。悲劇に思える生き様だが、シリアスに感じさせない演出と、松子のある種の神々しさが光となって差す。

一人の女性の、教師から夜の女に変わる生涯を描く点で、昨年の原一男監督作品「またの日の千華」と被る。時代時代で男を選び、晩年は教え子とできる。定説なのだろうか。

劇場のシネクイントの音響が悪いのか、作品自体がそうなのか、音が大きすぎて割れまくっていた。序盤、耳が痛かった。適量というものがある。

AD

コメント(36)