間宮兄弟はここにもいる。大きい夢や希望など持っていないが、日々の小さな幸せだけを追い求め、趣味に生き、無駄な雑学を増やし、女心の分からない僕は果たして、間宮兄弟のどちらだろうと、鑑賞前に思っていた。森田芳光といえば「家族ゲーム」「(ハル)」など、監督を意識して映画を見る以前から、なんとなく鑑賞しては印象に残っているものが多い。
自転車が2台並んで止まり、弟の徹信が橋から新幹線を眺めている。抗菌のウォークマンを耳にはめ、失恋して涙を浮かべている。兄の明信が慰めに来て、チョコレート、パイナップル、グリコと大幅に歩き、徹信はそれを見て笑った。兄弟二人仲良く暮らし、恋人はいなくても幸せな毎日を送っている。
彼らのアフター5は自宅でイスを並べて明信がビール、徹信がコーヒー牛乳を飲みながらテレビで映画鑑賞とスコアブックをつけながらの野球観戦に勤しむ。休日は昼寝をして散歩、中華料理店で餃子を食べる。分をわきまえて人畜無害。生活のいろどりが絶妙だった。二人は交友関係を広げようと、徹信の同僚や二人行きつけのレンタルショップの店員を家に呼ぼうと計画した。
もてないから女性に慣れておらず、ゆえにふられる。また新幹線を眺めて「二人でこれからも暮らそう。静かに。今まで通りに」というセリフは、捉えようによってはとてつもなく悲しい。しかし兄弟はポジティブに生きる術を知っているから、また最高のパートナーがいるから、充足できる。
三十路を前にして健全にカレーパーティー、その後にモノポリーなどしたくなった。芝生で紙ヒコーキを飛ばすのも良い。さて見終わって、自分を当てはめるなら、銭湯の後にコーヒー牛乳を飲むことから弟のほうだなと。