映画の上映時間を間違えて夜に差しかかる時間帯、失意のまま傘もささずサンダルで歩いていた。とある雑誌を読もうと近くのコンビにまで行くがそこになく、結局4件ををハシゴする。こんなに歩くのであれば靴を履いていけばよかったとか、この程度の雨なら自転車でもよかったとか、裏目がうらめしい。

その帰り、歩道の先に自転車が1台止まっている。いやゆっくりと動いているだろうか。傘で隠れて定かではないが携帯で話しているのだと思う。傘から出た下半身をまとうのはマイクロミニで、そのスカートのほんの一切れ程度をサドルに敷いて、生足がなまめかしい。

彼女とその傘とその自転車が邪魔なので、意図的に大きな足音を立てた。振り返り、僕を確認する。その際に彼女の足は地面についていたが自転車は進んでいて、徐々に壁に寄っていることを彼女が前を向いた時既に遅し。ズガガと壁を擦って、前輪は電柱との狭い隙間にすっぽり入った。「大丈夫」声をかけようか迷ったが、彼女も恥ずかしかろうとやめた。見たところ怪我もないだろう。僕は車道に降りて追い抜いた。右の手で左の襟を掴み、二の腕を口に押し当てたが、僕の頭と肩がふるふると震えていたいたことに、彼女は気づいたかどうか。