同じ町に住む12人の登場人物、老いも若きも女も寄り添って群像を成す。高齢者タクシーの運転手クリスティーンは得意客のマイケルを連れて靴を買いに行き、そこで店員のリチャードに恋をする。彼は最近離婚した。その息子たち。その同級生。その知人。クリスティーンは仕事のかたわれでアーティストを目指し、美術館に勤めるナンシーに売り込む。そのチャット相手。その隣人。
ポップな色彩にはぬくもりがあった。彼らが発する言葉には名言が多い。皆が想い、想われたく、人肌を欲する。夢と優しさに満ちている。
監督、脚本、主演を務めたミランダ・ジュライは弱冠30歳の才女でポスト・ソフィア・コッポラというフレーズがついてまわる。若くして才能を開花させ、しかもそれでいてスタイリッシュであれば、そう例えられるのは当然といえば当然。ソフィア同様にルックスが格別に整っているわけでなく、幸も薄そうな風貌だが、愛らしい。スカイブルーの瞳はコンタクトだろうか。主人公クリスティーンの役どころは、彼女の家族や友人が登場しないこともあって孤独で寂しい。ミランダ自身と等身大ではないだろうかと感じるほどにしっくりきた。少し夢見がちで、たまに突発的な行動をとり、野心はあるが根はネガティブで臆病者。そんな彼女のような人に、こんなアプローチをされたいと思う僕は、さらに上をいく夢見がち。