イーオン・フラックス 容姿の美しさは二コール・キッドマンと双璧だろうか。シャーリーズ・セロンの肢体はしなやかで非の打ち所がない。彼女の出演作は初めてだった。体にフィットしたコスチュームをまとい、近未来を駆け巡る。

ウィルスによって99%が滅亡した人類は地球上で唯一の、外界から隔離された都市・ブレーニャに移り住んだ。絶対的権力を持つ政府によって、市民はそこで平穏に暮らしているかのように見えた。行方不明者が相次いでも、自由のない社会では声高に主張もできない。反政府組織のモニカンは政府打倒を水面下で進めていた。妹を殺され、モニカンの女戦士イーオン・フラックスは復讐に燃える。君主・トレバーを暗殺するため、彼女は政府中枢の要塞に潜入した。

トレバーと対峙したイーオンだが、彼とは初対面と思えず殺せない。トレバーもまたイーオンのことを以前から知っているようだった。断片的な記憶に残る何か。二人がそれぞれにどれだけ運命的なものを感じたかといえば、暗殺者とそのターゲットという間柄にもかかわらずセックスしてしまうほどだった。このロマンティシズム。

元はMTVの短編アニメだそうで、逆にダサいほどスタイリッシュに徹底する。コミカルだった。モニカンの伝達手段は体内に埋め込まれた端子で行われ、さまざまなツールや武器でも未来を演出する。作者が自由にルールを決められて、未来という設定は何とも便利である。

イーオンの同僚で、足先を掌に換えたシサンドラをソフィー・オコネドーが演じた。「ホテル・ルワンダ」での好演が記憶に新しい。アフリカで1200人の命を救ったポール・ルセサバギナが愛する気丈な妻・タチアナは、掌が4つあるキワモノになっていた。イーオンが思い描く人類の希望のためシサンドラは犠牲となり、他にも彼女を援護した仲間を多く失いながら、目的を達成してイーオン・フラックスは微笑む。