交通事故でジュリーは重症を負い、目覚めた時に同乗していた夫と一人娘の死を知った。超クローズアップでジュリーの目に医者が映る。彼女の失意が計り知れない。至近距離のカメラがジュリーを追い、息づかいまで聞こえた。
著名な音楽家だった夫は欧州統合の協奏曲を作成している最中だった。彼の友人で協力者ありながらジュリーをひそかに思い続けていたオリヴィエが、未完だったその作曲に着手する。それはジュリーが破棄したはずだったが、オリヴィエはコピーを受け取っていたのだった。楽譜をなぞるとその音楽が流れる。
ジュリーは実生活中にしばしば思考停止に陥った。数秒も暗転しても場面は転換せず、その間には協奏曲が流れる。彼女の頭に失った家族がよぎって、喪失感や焦燥感が表されていた。屋敷と私財を捨ててパリで新しい生活を始めても、ふと、どうしようもない悲しみが襲ってくる。
トリコロールの青は自由を意味しているという。気丈に、勤めて自由に生きようとするジュリーに、ジュリエット・ビノシュがぴったりだった。キェシロフスキの最後の愛の始まり。