哀川翔が長淵剛に見えた。アフロの浅野忠信がフジオ、ハゲの哀川翔がミツオ。二人は消火器工場で働きながら柔術に励んでいた。工場の隣には、黒富士と呼ばれるゴミの山がそびえる。そこは死体も遺棄され、産業廃棄物と交わってゾンビが誕生した。東京がゾンビに侵食される。短いカットでテンポが良い。その中でミツオがフジオに歌で心情を告白するシーンを1カットで、語り口調のバラードはさながら長渕。
不法投棄物が高く積み上がり、ビルを優に越える山を形成する。無法地帯と化した都市で、一部の富裕層が権力を握る。あながちなくはない話である。花くまゆうさくの原作コミックを「殺し屋1」「牛頭」の脚本家・佐藤佐吉が監督した。色物かと思いきやプロットがしっかりしているため見ごたえがあった。
フジオとミツオのキャラクターは脱力して馬鹿の魅力があった。二人のぬるさが熱い。フジオと暮らすヨウコの執拗に露になる太もももまた熱かった。馬鹿さに潜ませるスタイリッシュな映像は「ピンポン」などを手がけたデジタルフロンティアのCGと、「アカルイミライ」などのスタイリスト北村道子による。
昨年同様クリスマスイブは一人で映画鑑賞となった。目つきは鋭くなっていたが、これも悪くない。