スクラップ・ヘブン バスジャック犯と乗り合わせた3人が再会を果たす。同じ設定の「EUREKA ユリイカ」とはテンションが違う。31歳の李相日監督は若気の至りを肯定して推奨するかのように、たぎらせて走り切った。

ルーチンワークに嫌気が差して志が折れつつある刑事シンゴ。奔放に生きるトイレ清掃員テツ。隻眼の薬剤師サキ。3人の若者が乗ったバスは、銃を持つ自暴自棄の男に乗っ取られた。テツが撃たれ、シンゴとサキも危機に晒される。命を取りとめた彼らだったが、事件は深く刻み込まれた。

想像力の欠如を憂う。木を見て森を見ないシンゴは、テツと共に他人の復讐を請け負った。大義名分にかこつけて悦に浸るのは、偽善者の常套手段のようだが、それは人間誰もが持ち得る感性である。事の重大さと過ちに気づいたシンゴは苦悩した。テツには覚悟の道標が見えており、爆薬を作るサキにもそれがあった。三者三様の後遺症は破滅へ向かう。

この女優の出演作をもっと見たいと思ったのはおそらく杉村春子くらいで、僕は女優によほど興味がない。本作も鑑賞前は栗山千明よりオダギリジョーと加瀬亮が気になっていたが、鑑賞後は柄本明に持っていかれた。怖さがにじみ出ている。光石研や田中哲司、脇の味は酸っぱいに限る。