「下妻物語」の監督・中島哲也プロデュースによる3話オムニバス。友人が端役で出演しており、勧められていた。モデルの浅見れいな主演で、彼女が3作それぞれ違うヘアスタイルで3役に挑んでいる。皆、新人監督で、浅見れいなの描き方は全く異なっていた。
トップの「おさげの本棚」は古本屋を営む女と、そこに通いつめる苦学生の物語。彼女に恋焦がれる男から見た浅見を映し出していた。愛される眼差しは、その対象を美しくとらえる。鹿夫の語りは詩的である。時代設定は定かでないが、昭和の香りが漂う。
「アフロアメリカン」ではアフロヘアに扮している。キッチュでチープな映像で、料理を通じた愛を綴る。英語と日本語が入り混じり、字幕も表示される。聞き取れるセリフに、それとニュアンスの違う字幕。耳と目による言語伝達のズレが生じる機会は稀である。
ラストは「マッシュルーム」。マッシュルーム・カットと、恋愛(Mash)の部屋(Room)をかけたのか。高校時代にいじめに遭った少女が、その高校でアイドル的存在の先輩で今は記憶喪失になっていた男に再会し、彼に恋人同士だったと嘘をつく。消したい過去と消えた過去を紡いだ。
“もし生まれ変わるとしたら別の自分になりたい。別々の3人の女の子の憧れが実は一人の女の子の心中のように展開する”というコンセプトのようだったが、作品に統一感はなく、ただ主演が同じというキャスティングだけが残った。それでも浅見れいなの魅力を引き出したのだから結果オーライではないだろうか。事前情報がなかったら同一人物だと気づかないほどに、ヘアスタイルだけでなく表情を使い分けていた。