髪を切った。御用達のそこは女性スタッフ一人できりもりしている。店内に二人きり、パトリス・ルコント「髪結いの亭主」が頭をよぎる。さしずめ僕はかのダメ亭主。彼女のアフロは天然パーマで、子供の頃は大層コンプレックスだったそう。それから髪に対する思い入れが強くなり今に至る。劣等感は払拭し、様々なヘアスタイルをその日の気分で楽しんでいる。
僕は造園業をしていたことがある。当時思っていたのは、美容師または理容師と庭師は似ているということ。ハサミを扱い、見栄えをよくする点で同じである。衣服に絡む無数の髪の毛はいわば葉渋や泥。
美容師または理容師は散髪やマッサージのフィジカルだけでなく、メンタル面でも退屈させないように話を合わせよいしょする。客を気持ちよくさせるリラクゼーションという点で水商売にも通ずる。接待を受けてα波を分泌させる。
仮説を繋げると僕はホストに準じていたことになるのか。そう考えるのも悪くない。