腰痛もほぼ癒えて久々の劇場へ。最終日だった。照明助手として参加した友人を讃えて。監督の君塚良一は「踊る大捜査線」など脚本家として名が通っていたが、メガホンを取ったのは初めて。かなり遅咲きのデビューといえる。以前から監督願望があったのか、それともぜひとも自分が撮りたい原作脚本だったのか。

監察医の白川真言には死者の霊が見える。この世に悔いを残した霊を供養するために、彼は真相を究明する。色彩を巧みに操り、恐怖を助長させる。真言は仕事と供養で妻の絵梨とすれ違いが生じていた。結婚記念日、彼女は真言に伝えたいことがあったのだが、急な仕事で聞いてあげられなかった。その日、絵梨は交通事故で亡くなる。彼女もまた霊となって、真言の前に現れる。霊は喋られないという設定。検死と霊の存在で真相を暴いていく。まず死体ありきなので、起承転結のうちの起が結を兼ねる。

展開はTVドラマのようだった。3つの事件からプロットは成る。突然死した幼女の遺体から虐待を知る。過労で冷たくあたっていた母親は死後の幼女と心を通わせた。女子大生の絞殺体からは、彼女の交遊関係の乱れが暴かれる。彼女の父親はそれを知ったことを後悔した。迷いが生じながら、真言は絵梨のメッセージを汲もうと努めるようになる。真言と絵梨の愛を軸に置きながら、ショッキングでグロテスクな描写を盛り込む。ホラーが色濃いラブストーリーはあまり例を知らない。