黒沢清監督、役所公司主演、しかも役どころが同じ刑事だったりで「CURE」と混ざりそうだ。記憶の混同回避は僕の課題である。
人間と自然、1本の木と森。共存共栄の意義を問う。冒頭で「世界の法則を回復せよ」とある。役所公司扮する藪池刑事が、人質と立てこもる犯人から受け取ったメッセージ。これが本作のテーマとなる。
激務で疲弊しきった藪池は、立てこもり事件で犯人と人質の代議士を生かせず、責任を取らされて強制的に休職させられる。ふらりと東京を離れた彼はある森に迷い込んだ。幻想的な木が1本だけぽつんと生えている。その木の周りだけ枯れ果てていた。
木をカリスマと名づけてその長寿を守る、精神を病んだ青年・桐山。カリスマの毒素によって枯れゆく森林を保護するため、またカリスマで大金をせしめるため伐採を企てる植林作業員・中曾根。森林の再生には全ての破壊しかないとする大学教授・神保美津子。三者三様の行動を藪池が見つめる。藪池は桐山のところに身を置き、彼の手伝いをする。カリスマと藪池が接触するシーンは、太陽による逆光がまぶしく、照明の光の当て具合が危うい。
中曾根はプラントハンターの猫島を呼び寄せてカリスマの伐採を謀る。桐山は奪回するが美津子の妹の千鶴に襲われ、カリスマは焼かれる。落胆する桐山だったが、藪池は新たなカリスマを見た。そのカリスマの存在は、この人間模様の生態系を壊す。「生きる力と殺すカは同じものだ。1本の特別な木と森全体、両方が生きようとしているのだから両方が生きればいい」。矛盾が複雑に生じて、正解のない世界を生き抜かなければならない。