兄弟監督2本目はベルギーのダルデンヌ兄弟。彼らの作品はこれで3作中の2作を体験したわけだが、その一貫性を複数で成し遂げている点が特筆。

ロジェとイゴールの父子は不法滞在外国人の斡旋、売買をしている。労働をさせながら住居も提供するそこには多人種が集まる。ロジェは自分と息子イゴールのために生きる。イゴールは父の生き方に疑問を持ちつつも彼だけが絶対的な存在だ。慕い畏れる父は神に近い。堅くも脆くもある父子愛は美しかった。

ある日、不法滞在者の一人アミドゥが作業場から足を踏み外して重傷を負った。ロジェは彼を病院に連れて行かず、土に埋めて失踪を装う。アミドゥを見殺しにして「妻子を頼む」との最期の言葉を聞いたイゴールは、その約束を守るべく唯一無二の父を裏切る。良心の呵責にさいなまれ、アミドゥの妻アシタに慈悲を求めているようにも思えた。

手持ちでぶれるカメラの視点は常にイゴールから離れない。音楽は一切なく、そこにいる人物を淡々と映す。それでも感情移入させるのは登場人物を丹念に描いているからだろう。作風のみならず全てにおいて職人気質である。エンドロールが流れるとき、受け手に与える余韻が独特だ。