過去に見ているのは「ゆきゆきて、神軍」だけだが、ドキュメンタリー一筋だった原一男監督初の劇映画を見逃すわけにはいかない。終了間近ということは興行が芳しくないと予想される。

千華という一人の女を4人の女優が演じる。産んだ息子が小学生となるまでの10数年だが、吉本多香美、渡辺真起子、金久美子、桃井かおりと年齢幅が大きい。その時その時に情事を重ねた男たちに写る視点で描き分けている。4人が演じることで外見だけでなく性格的なものまで変わってくる。愛する者によってそれほどに変わるものか。おそらくそうだろう。チェンジする千華の発想と体現はスポットが当たって然るべきだ。

ドキュメンタリー作家として名を馳せる原一男は時代背景を1970年前後にした。創りだされた女のドラマという虚構と、安保闘争やあさま山荘事件といった現実。フィクションとノンフィクションを入り交えたものは数多くある。女の、一般的に捉えられた場合の転落人生を、高度経済成長期の日本と同時進行させた原。虚と実だけでなく、男と女、生と死は表裏一体である。