先週末はTSUTAYAが半額デーだった。5本くらい借りてやろうかと思ったが見れるわけもなく、しかも日曜の夜ともなればだいぶ貸し出し中になってしまっている。いつも通り2本に留め、いつもの倍近い長蛇の列に並んだ。黒沢清ホラーを借りる。ビデオを見る行為がとにかく億劫で、今日になってやっと1本目。「借りたのだから見なければ」と義務になってしまった時点で鈍り、渋る。
被害者が胸をX字に切り裂かれる事件が多発した。犯人に接点はなく、偶然か必然か担当刑事の高部は悩まされる。高部の友人で犯人の心理分析をする心理学者の佐久間の見解は「犯罪の目的は分からない」。他人のことは知り得ない。その本質を突いている。一連の事件に絡む青年・間宮に記憶はない。会話が成立しない。そして催眠暗示によって犯行を促す。暗示の手口は一人目、二人目と接するうち徐々に明らかになった。「俺の中にあったものは全部外にある。だからあんたの中にあるものが見える。その代わり俺は空っぽ」な間宮が扱う火と水。終始暗い中、ライターを灯し水の滴りが響く。
高部と佐久間は間宮に辿りつくも、真相を暴くはずが逆に追い詰められていく。高部の妻・文江は精神を病んでいた。努めて彼女を気遣う高部だったが、間宮には見抜かれていた。わずらわしくて仕方がないこと。妄想と焦燥、画面には陰鬱な圧迫感が常に潜んでいる。淡々と進みながら、恐怖は常に煽られていた。ラストはあたかも平静のように見せ、実はそれはとにかく薄い表面でしかなく、あるいは狂気に気づきたくないのかも知らん。
何かの雑誌で「黒沢清はアンゲロプロスに似ている」と読んだことがある。横スクロールでの人物の捉え方に秀でる。