地球上の自然や生物のたくましさと美しさがふんだんに取り込まれている。渡り鳥の長い旅路は生きるための戦いだと冒頭に述べられる。様々な渡り鳥をあり得ない映像で魅せられた。ドキュメンタリーと言えど作為的な一面も感じられた。雪山の中、群れで行動する鳥たち全てが首を上げ、次の瞬間に飛び立つ。映像は変わって雪崩の風景を写す。また別のシーンでは雛鳥が巣の中で親鳥の帰りを待っている。後ろから草刈機が轟音を立てて寄ってくる。そして鋭い刃が草を次々と刈るアップ。細かなストーリーが合わさったオムニバスのようだ。

どのようにして撮影をしたのか検討もつかないが、鳥の姿が実に美しい。カメラは鳥と同じスピードで追う。紅葉の上を白い翼が揺らぐ。求愛のダンスを踊り、クチバシを合わせる。優雅に空を漂う鳥の群れが、餌を得るため一斉に海へ着水する。演出が不可能な動物に対して、根気よく機会をうかがったのだろう。カメラは常に鳥を焦点にピントを合わせる。

渡り鳥は一年をかけて周遊する。エンドレスの旅を繰り返す。冒頭に出てきた足に蔦を絡ませた鳥が、温暖な土地から北極へと向かう。ラストで再度登場して緑の大地を飛ぶ。