
ギリシャ各地をまわる旅芸人の一座の群像と、彼らを通して軍事政権下のギリシャを綴る。アンゲロプロスといえば長回し。1シーン1ショットが多い。時間を含めた4次元の構成力に秀でている。カメラはデモ行進する群衆を捉え、ゆっくりとパンして芸人一座との合流をおさめる。広場を映すシーンも360度回転しながら絶妙のポジショニングを見せてくれた。全てが計算しつくされている。3人以上の人間を撮るときの、それぞれの立ち位置も素晴らしい。客観的な視点が映える。
曇天のギリシャは陰鬱だ。戦争に虐げられ、暗く影を落とした民衆の生活を如実にあらわしている。10数人で形成する芸人一座それぞれの人間像を描くには、4時間弱という上映時間は適当だと認識した。各々の関係やヒューマニズムをしかと受け止めることができた。