韓流に乗って「悪い男」を借りた。監督のキム・キドクは中卒で工場勤めの後に軍隊に入り、31歳のフランス留学中に初めて映画を見て、それから映画界に入ったらしい。異端児だ。
異端児ゆえの強さを感じた。美しいまでに不器用な主人公の男・ハンギが、惚れた女・ソナを手にいれるため尽くす。多義で荒々しかった。まずヤクザのハンギ。一目惚れした女子大生のソナを娼婦におとしめる。客に抱かれるソナを、マジックミラーの向こうからただ見つめるハンギは実直だった。傷つけながらしか守れず愛せない。ソナも転落していく人生を抵抗しながら受け入れていく。ハンギの愛の大きさに気づき、彼も受け入れていく。演出もまた粗暴ながら叙情的だ。ハンギとソナが出会い、別れる公園のシーン以外はどこかくすんでいるような映像に見えた。マジックミラーに張られた、顔の部分だけない男女の写真から、鏡越しに映し出される部屋。喧騒の娼婦街で血と雨に濡れてのた打ち回る男たち。そこに美しさを見出し、表現したキム・キドクは、映画界の安藤忠雄だ。学歴がなくても独学で上ることができ、迎合しないで独創力を保ち続ける力が羨ましい。
異端児ゆえの強さを感じた。美しいまでに不器用な主人公の男・ハンギが、惚れた女・ソナを手にいれるため尽くす。多義で荒々しかった。まずヤクザのハンギ。一目惚れした女子大生のソナを娼婦におとしめる。客に抱かれるソナを、マジックミラーの向こうからただ見つめるハンギは実直だった。傷つけながらしか守れず愛せない。ソナも転落していく人生を抵抗しながら受け入れていく。ハンギの愛の大きさに気づき、彼も受け入れていく。演出もまた粗暴ながら叙情的だ。ハンギとソナが出会い、別れる公園のシーン以外はどこかくすんでいるような映像に見えた。マジックミラーに張られた、顔の部分だけない男女の写真から、鏡越しに映し出される部屋。喧騒の娼婦街で血と雨に濡れてのた打ち回る男たち。そこに美しさを見出し、表現したキム・キドクは、映画界の安藤忠雄だ。学歴がなくても独学で上ることができ、迎合しないで独創力を保ち続ける力が羨ましい。