吉田都さんが英国ロイヤルバレエ団を引退したのが昨年2010年6月29日です。
そのときの演目が「ロミオとジュリエット」です。
あれから、1年、吉田都さんが今度は英国バーミンガムロイヤルバレエ団に最後の客員出演しました。
場所は同じく上野にある東京文化会館です。
演目は「真夏の夜の夢」。
原作は言わずとしれたシェイクスピアの代表的な戯曲です。
音楽はメンデルスゾーンです。
振り付けは、“ロイヤル・スタイル”といわれる独特の優美な様式を生み出し、バレエ界のシェイクスピアと称されるフレデリック・アシュトンです。
指揮はポール・マーフィー、演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、合唱は江東少年少女合唱団です。
アシュトンの振り付け、クラシックなタイトルは最高です。
オーソドックスな踊り、そして所々に織り交ぜたウイットに富んだ表現をなす踊り、さらに舞台上にいるすべてのバレエダンサーが、一人ひとりが個々にストーリーを動かしている踊りと、どれもが実に見事に複雑な歯車のように絡み合います。
さすがにバレエ界のシェイクスピアと呼ばれるだけあって、見事な振り付けです。
抜群の派手さがあるわけでもないのですが、本当にしっとりと心に沁みてきます。
舞台装置も奥行きがあって、作りもいいです。
そして、吉田都さん…本当に何も言うことはないですね。
すばらしすぎます。
日本人であることの「どうしようもなさ」を、それでもいいと受け入れ、覚悟した見せ方、踊り方、それはクラシックバレエの基本をすべて満点で押さえた上に成り立っています。
あの動きの細やかさ、そして、少しでも足を長く見せるための足の運び方お尻の位置のキープのしかた、リフトをされるときに、あえてつくる上半身の見せ方、どれひとつとっても、吉田都という妖精がそこにいるかのような演じ方です。
吉田都さん、1965年生まれの46歳になります。
そのしなやかな体からはとても信じられません。
彼女のバレエに心から拍手を送ります。
ちなみに英国にはロイヤルの名称を冠することを許されたバレエ団が2つあります。
ひとつが英国ロイヤルバレエ団(RB)、もうひとつが英国バーミンガムロイヤルバレエ団(BRB)です。
英国バーミンガムロイヤルバレエ団は英国ロイヤルバレエ団の妹と言った位置づけにあります。
吉田都さんは1988年にBRBのプリンシパルになり、1995年BRに移籍しています。
BRBは3年ぶりの再来日になります。
アシュトン版の「真夏の夜の夢(アシュトン版)」がいよいよ7/20に発売になります。
アメリカン・バレエ・シアター版になります。
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では「真夏の夜の夢」のストーリーに簡単に触れておきます。
妖精の王様オベロンは妖精の女王タイターニアと夫婦喧嘩をしています。
夫婦喧嘩の理由はタイターニアがインドからさらってきたかわいい男の子を独占してかわいがり、オベロンが身の回りの世話役にしようとするのを許さないからです。
怒ったオベロンは、タイターニアが眠っている間に、目覚めたときにはじめて見た者に恋をしてしまう薬草のエキスを彼女のまぶたに振りまきます。
タイターニアが目を覚ましたとき、いたずら者の妖精バックにロバに変身させられた田舎者のボトムが目の前にいたので、彼に恋をしてしまいます。
恋人同士のハーミアとライサンダーは、森に駆け落ちしてきましたが、ハーミアの父の意向で彼女と結婚することになっているデミトリアスに追いかけられています。
そのデミトリアスは昔の恋人ヘレナに追いかけられています。
それを見たオベロンは、バックにデミトリアスがヘレナに恋をするように薬草をのエキスを振りまくように命令します。
バックは森でデミトリアスが眠っているすきに毒草のエキスを振りまきます。
ところが、バックの勘違いで、薬草のエキスを振りまいたのはライサンダーでした。
そこで、オベロンが寝ているデミトリアスの目に薬草のエキスを振りまきます。
そなると、デミトリアスもライサンダーもヘレナに恋をしてしまいます。
ライサンダーは恋人のハーミアにもつれなくなります。
恋人たちの混乱をかわいそうに思ったオベロンは薬草の魔法を解くことにします。
まずライサンダーの魔法を解きます。
これで、ハーミアとライサンダーが元の鞘に納まります。
ここで、オベロンはデミトリアスの魔法を解くのをやめます。
そなると、デミトリアスとヘラナは恋に落ちます。
オベロンはタイターニアの魔法を解き、仲直りします。
タイターニアはインドからさらってきた男の子をオベロンに渡すことにします。
バックのいたずらが解かれたボトムはロバから人間に戻りますが、夢か幻か、誰かに愛を告白されて、恋人同士なった記憶が薄らと残り、不思議な思いのやり場に困惑してしながらも、この記憶をバレエにしようと思い立ちます。
まさに、ウイットな世界、真夏の夜の夢、とてもあと味のいい不思議な物語です。
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今回は「ダスニスとクロエ」が同時公演です。
2009年にBRBのプリンシパルになったばかりのナターシャ・オートレッドがクロエを演じました。
これからが期待されているプリンシパルのひとりです。
踊りに派手さはないですが、とてもにキレイです。
そして、表情も表現力豊かでいいです。
(C)
「ダフニスとクロエ」はモーリス・ラヴェルが作曲したバレエ音楽です。
同じくアシュトンの振り付けですが、現代バレエっぽい雰囲気を持ち込んでいるので、衣装からセットまであっさりとまとめられています。
個人的には、モダンバレエ系の振り付けではないのですが、クラシックバレエから一線、モダンバレエの方向性を模索した作品があまり好きではありません。
バレエはがっつりクラシックで味わうのが好きです。
そして、今、吉田都さんは積極的に後進たちを指導しています。
ですから、将来のプリマたちから絶大なる人気を博しています。
吉田都さんから妹たちへ、バレエレッスンのすべてが詰まった最新刊です。
Miyakoレッスン 吉田都のエッセンス・バレエ・クラス
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篠山紀信さんが撮りおろしたフォトエッセイ集も見逃せません。
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吉田都 篠山紀信
原作を読んでおくのもいいかもしれません。
夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)
シェイクスピア 福田 恒存
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