『血液型の科学』藤田紘一郎 | ほたるいかの書きつけ

『血液型の科学』藤田紘一郎

本屋で立ち読みしてきた。いやあ、ひどい本です。不誠実にもほどがある。以下は感想。立ち読みで第一章までをざっと読んだだけなので、詳細は記憶違いなどもあるかと思いますがご容赦。

 まず出版社のページにある紹介 を引用しておく。
A型はガンにかかりやすい
B型はブタ肉が合わない
O型は梅毒と結核に強い
AB型は感染症に弱い
その医学的根拠とは?
血液型と病気・性格との関係を免疫学から読みとく!

血液型は、人類の歴史を左右してきた!
血液型にまつわる事項について、本当に科学的な解説を試みた本はいままでになかったと思います。本書は、ABO血液型に本格的な科学的メスを入れて、本質を探究したものです。(「はじめに」より)

本書の内容……
第一章 血液型による性格診断は「エセ科学」か
第二章 血液型とはそもそも何か
第三章 血液型はどのようにして生まれたか――人類は全員O型だった
第四章 血液型で決まる「体に合う食物・合わない食物」
第五章 血液型が左右した病原菌との闘い
第六章 血液型別・かかりやすい病気とその対策

■血液型による性格診断は本当に「エセ科学」か?
日本人は「血液型」の話が大好きだ。一方で、学者たちは「血液型診断に科学的根拠はまったくない」という。
もちろん、血液型によって人の性格や運命がすべて決まるわけはない。けれども、血液型を決めている「血液型物質」は、血液のみならず、腸や骨など体中の組織に含まれている。そのことから、血液型ごとの免疫力の差、ひいては、血液型によってかかりやすい病気・かかりにくい病気や、合う食物・合わない食物があることを証明できるのだ。
「血液型」が生まれた歴史から、血液型別の病気対策まで――これまでにない「科学的」な血液型の世界。
この本の面白いのは、最初に「血液型による性格診断は『エセ科学』か」と題して、血液型性格判断が学術的に検討する価値のある課題であることを必死に印象づけようとしている点にある。というわけで、そこだけざっと眺めたわけだ。
 血液型性格判断の歴史も簡単に触れられていて、血液型発見当時の優生学の問題や、ドイツに留学した医師ら(名前は出ず)により日本に血液型性格関連説が持ち込まれたこと、古川が広めたこと、戦後に能見らが復活させたことが述べられている。ただし、戦後の心理学者による研究はほとんど出てこない。大村政男氏が、粘り強く血液型と性格の関係を証明しようと研究を続けている、というように触れられる程度だ(大村氏の問題はここでは措く)。
 もう一人、心理学者の名が登場する。あの菊池聡氏だ。血液型性格判断に関心のある人ならご存知だろうが、様々な「不思議現象」を心理学の立場から解明している人だ。どのように登場しているのか。藤田氏は、菊池氏が、血液型物質が性格に影響を与えることはないと批判している、と主張しているとして批判しているのだ。もちろん、菊池氏が血液型性格判断を批判する際の最重要点はそんなことではなく、「血液型」と「性格」の相関を調べた結果、強い関係が見られなかった「から」、血液型性格判断を批判しているのである。菊池氏の名前を挙げたからには、彼がどのような主張をしているかぐらいは多少なりとも目に入っただろう。それを知らずしてこのような批判の仕方をするなど不誠実極まりない。科学者としては最低の部類に入ると言っても過言ではないだろう。もし気づかなかったというのであれば、ただのバカだ。文献調査もロクにできない、研究者としての資質に欠ける者と言わざるを得ない。藤田氏がどちらの部類に入るのかは知らない。が、本業の寄生虫学で素晴しい業績を挙げていたとしても、これだけ世の中に害悪を撒き散らすようではダメである。

 もし藤田氏が本気で科学的に血液型と性格の関係を調べたいのであれば、最低限、ここで紹介 した松井論文ぐらいは目を通すべきだ。それが誠実な研究者というべきであろう。

 ちなみに、目次を見る限りは、論理展開はおそらく昔の竹内久美子の本『小さな悪魔の背中の窪み-血液型・病気・恋愛の真実-』の焼き直しに過ぎないのではないかと想像する。バカバカしいのでそこまで検討する気になれないが、もしそのような酔狂に挑戦される方があれば―私も散々バカやってきて、その痕跡がこのブログには大量にありますが^^―教えていただけると有り難いです。

 藤田紘一郎氏については、「幻影随想」のこのエントリも参考になると思います。「カイチュウ博士こと藤田紘一郎センセが、水商売だけでなく血液型健康商売に手を広げたようだ


血液型の科学 (祥伝社新書 189)/藤田紘一郎
¥798
Amazon.co.jp