『共鳴によってのみ生命の音は振動し続ける』その1 (『Hado』9月号) | ほたるいかの書きつけ

『共鳴によってのみ生命の音は振動し続ける』その1 (『Hado』9月号)

 大仰なタイトルと思われたかもしれないが、これ、『Hado』内の記事のタイトルである。羊水について触れた記事だ。正確には、『江本勝 ドイツ・ハンブルグ版 誌上セミナー』というのが頭につく。『水伝4』発刊記念ということで、ドイツで講演してきたそうだ。その報告が、この記事である。

 とりあえず、記事のリードを引用する。
 ―去る6月21日、4年ぶりになる待望の水の結晶写真集第4弾『水はことばの鏡』の発刊を記念して、ドイツのハンブルグでセミナーが開催されました。振り返ると『水からの伝言Vol.1』は、ヨーロッパから火がついたのがきっかけとなり、全世界で知られるようになりました。今では45カ国語に翻訳されています。
 皆様もご存知のように、昨年、江本会長はアメリカでドクターストップになり、しばらく日本国内で療養生活をしていました。しかし、皆様の温かいご声援のおかげで身体もすっかり回復し、以前と同様、世界行脚を開始しています。
 水の伝道師として原点となるドイツで行われましたセミナーをお送りいたします。
私は『水伝』が広まった経緯の詳細を把握していないのだが(TOSSが広める以前の段階の話)、もしこれが本当だとすると、「東洋の神秘」的な、まさにニューエイジ的な受け止めだったのだろうか。

 さて、以下、7ページにわたって記事が続く。女性校長会の記事が2ページであったことを考えると、こちらの方が内容としては一見「充実」している。しかし、はっきり言って、内容を理解することは不能である。断片を無理矢理関係づけて強引に一つのストーリーに仕立て上げ、ソレっぽいキーワードが出てくるまっとうな話を自説の補強材料にしてしまうアクロバットの連続だからだ。
 そこで、本エントリでは、記事の小見出しに番号を付け、小見出しで分けられた節ごとに内容を紹介していきたいと思う。

(1)水が言葉に反応する その答えがここに
 まずは講演の冒頭である。この「セミナー」は江本一人の講演ではなく、スピーカーが3人だそうである。江本以外の人物については触れられていないが、「ドイツ語、英語、そして日本語の私です」と述べているので、あとの二人は日本人ではなさそうである。セミナー主催者は「コーハ出版のコンラッドさん」だそうだが、どういう出版社なのだろうか。
 「すでに70カ国を訪れ、1000回以上のセミナーをしました」そうだ。アル・ゴアなみである、と誇っている。しかし、「ゴアさんはノーベル平和賞を受賞され、とても良かったですね。私は今もって、日本では、科学界や物理学会の一部から非難され、叩かれています。神様は不公平だなぁ(笑)。」神様にもっと「ありがとう」って言わなきゃ!それはともかく、(ゴアへの評価は措いといて)この過大な自己評価はなんなのかね。
 この節の残りの部分を引用しよう。
 皆さんが最初に興味をもっていただいたのは、言葉によって水が変わるということでした。なかには、
 「水が言葉を読めるわけはない、お前は何とインチキなことを言うんだ!」と言う人もいました。
 当然、開発者として反論をする必要があり、一生懸命その理由を考えました。
 その答えをつい10日前に日本で出版した『水からの伝言Vol.4 水はことばの鏡』という本の中で述べています。まだ日本語だけで、英語にもなっていません。今日の話をお聞きになり、この本がぜひ欲しいという方は、先ほどご紹介したコンラッドさんに「まだか?」「まだか?」と聞いてください(爆笑)。
コンラッドさんには「ありがとう」と言ってあげた方がいいんじゃないか、というツッコミは措いといて。
 一つ目のポイントは、江本がファンタジーだのポエムだの言おうと、「水は言葉を読めるのだ」というのが彼の主張である、ということだ。つまり、「科学的に分析すれば、水が言葉を理解していることがわかるはずだ」、つまり『水伝』の主張は科学で証明されるべきものだ、ということである。従って、江本が科学の土俵に上がってきた以上は、あくまでも科学のルールにのっとって、徹底的な批判をすることになる。自らの主張の正しさを示したければ、きちんと論文を書き、コミュニティ(信奉者内部ではなく)で認めさせる必要がある。もちろん、江本がそんなことをするはずはなく、絵本を小学校に配ったりして、空気を醸成していくわけだ。
 つぎに、どのような反論が『水伝4』に載っているのか、ということが気になるだろう。
 反論などあったかな?と思った私は、再び『水伝4』を開き、該当部分を探してみた。どうやら、「はじめに」に書かれていることが、江本にとっては「反論」らしい。そこで、「公正さを保つため」(笑)、江本の反論も載せておこう。
 なぜこの様な現象となるのか?という事について、この様な事を世界で始めて(ママ)発表をし、多大の共感者を得た者としての責任上、私はこの10年間、一生懸命これを考えてきました。そして前述したように世界の多くの国を訪問してきた体験から、その答えは既に各宗教の教えにあるということに気がつきました。
 例えば
キリスト教・・・はじめに言葉ありき
イスラム教・・・その経典「コーラン」に書かれている言葉の絶対性
仏教・・・真言(マントラ)
ヒンズー教・・・サンスクリット言語、オウムと言う言葉の響きの絶対性
神道・・・言霊

 そして私はこれらのカテゴリーに共通している言葉を捜してみると、すぐに「振動」という言葉に行き当たりました。もちろんこれらの宗教の教義は、原点追及の結果得られたものばかりですから、「振動」というより、その原点、すなわち「光」であり、「波動」です。これは現代物理学が追い求めている「量子」の世界の事でもあるでしょう。
 いずれにしても、「言葉」とは一体何であるのか、ということの解明は、人間とは一体何者であるのか、という事を解明する為の必須条件になると私は思います。そしてその言葉と水との関わりは一体どの様な事なのかも、同じように、人類がいずれは解明しなければならない重要課題と考えます。
 私が行ってきた、水に対しての文字見せや、写真を見せ、音楽聴かせ、そして祈りを捧げる実験の結果は、きっと将来科学者が、この課題について取組んでくれる時の、大変重要な参考資料となると思います。
というわけで、江本自らが「水伝」は科学だ、と宣言している(この後に、この本をベンベニスト[文中ではバンベニステになっているが]に捧げる旨書いてあるのは今回は措いておこう)。
 まあツッコミどころ満載の「反論」であるが、ちょっと見るだけでも、(あ)どうして「振動」が共通のキーワードになるのか、(い)「振動」の原点が「光」であり「波動」であるとは一体どういうことか、(う)そんなものは現代物理学が追い求めている量子の世界とは関係ないのだが、どこの世界の物理の話か、(え)言葉と水の関わりがどうして重要課題なのか、等々、疑問がテンコ盛りである。こんなものが反論になるなら、なんのために査読誌があって、レフェリーとの壮絶な闘いを繰り広げなきゃならんのだ。
 結局、江本の「反論」なるものは、「論」にはまったくなっていなくて、単に思いつきを並べただけのものであることがよくわかるであろう。思い込みと妄想の産物でしかない。

(2)「私たちは水です」大切なのは子どものころからの言霊教育
 「ナマステ」を見せた水の結晶だの「天使」「悪魔」「おふくろの味」「インスタント食品」だのを見せた水の結晶の写真の紹介。「悪魔」の写真って、「天使」の時の結晶がとけかけただけなんじゃないの?という気もするが、それも措いておこう。どうせ統計的には無意味なことだ(詳細はテーマから「水からの伝言」を選んでください。過去のエントリで統計についても少し取り上げています)。
 そして、最後にサンスクリット語で「シヴァ神への祈りの言葉(サンスクリット語)」を見せた水の結晶の写真を紹介。「この写真集を見て、若い女の子たちが、毎朝、鏡を見て自分に向かって「あなたは、とても美しい」と言い始めているそうです。だんだん世界中の皆さんが、自分が水であることを認識し始めたようです。」だと。まあポジティブな自己暗示をかけて己に自信を持って生きるのは、適度であればいいんだろうけど。みんながみんな、鏡に向かって「あなたはとても美しい」と語っている光景は、ちょっと想像したくない。

(3)お腹の中の赤ちゃんに語りかける胎教の大切さを伝えよう
 「そんなこともあって、私は胎教に興味を持ち、今、韓国のお医者様と研究を進めています。」という文でこの節は始まる。「そんなこと」って何だ?と思うのだが、「若い女の子」が自分に語りかけているのだから、胎教で赤ちゃんにも語りかけよう、ということか。
 ここで、先日のエントリで触れた、羊水(を「ホメオパシー溶液の倍率である5万倍に薄めた水)の結晶の話が出てくる。
 ブクマコメでダフトパンクに触れていた方が複数いらっしゃったので、正確に引用しておくと、「次はダフトパンクというグループの電子音楽を聴かせました(笑)。たしかにこれはこれで良いのですが、少し落ち着きのない子なるかもしれませんね(笑)。」(ママ) この写真、細かい6角形の角板がたくさんつながっているような写真になっていて、だから「落ち着きがない」なのだろう。なんと強引な。

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まだ2ページちょいしか紹介していないのですが、長くなったので、続きはまた次回に(すいません)。小見出しだけ紹介しておきましょう。
(4)言葉には振動がありエネルギーを持っている
(5)共鳴することによって生命の振動は続く
(6)人間関係の調和もそれぞれの音の調和から
(7)カラオケタイム
(8)水はエネルギーをもっている それは現代科学ではタブー
(9)新たな科学の幕開け 多次元世界が立証される?
とりあえず羊水の部分は紹介しました。ここから、どんどんディープな世界に入っていきます。乞うご期待!

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経験上、この手の話はどう説明しても誤解する人がいるので、あらためて明確に書いておきますが、「水からの伝言」はその前提が間違っています。言葉(や音楽や絵や「波動」)は、水の結晶形に影響を与えることはありません。膨大な実験が、それを示しています。
 ましてや水に道徳を教わるなど人間の尊厳の否定もいいところです。「お水様」に教えを乞うぐらいなら、自分の頭で考えましょう。人間は考える葦、なのですから。